サッカーエージェントは、選手の代理人として多岐にわたる業務を担当する仕事です。
単にサッカーが好きというだけでなく、専門的な知識や高い交渉力が求められる職種でもあります。
本記事では、サッカーエージェントの具体的な仕事内容や年収、さらにこの職業の魅力ややりがいについて詳しくご紹介します。
サッカーの代理人の仕事
サッカーの代理人の仕事は主に2つです。
- 契約交渉
- 選手のサポート
契約交渉
代理人は、選手とクラブの間に立ち、契約交渉を担当。
選手の代理人として、クラブと条件を調整し、選手の利益を最大限に守る役割を果たします。
選手の強みや魅力をクラブ側に伝えることで、選手にとって最適な契約を結ぶために尽力します。
選手のサポート
選手の成功を後押しするために、エージェントは様々な方法でサポートを提供します。
例えば、スポーツメーカーとの契約を仲介し、選手にスパイクや装備品を提供できるよう働きかけることも重要な業務の一つです。
また、選手の多くは若い頃から高収入を得る一方で、将来に対する不安を抱えることも少なくありません。
そのため、エージェントは選手のメンタル面や経済面に配慮する必要があります。
具体的には、ファイナンシャルプランナーなどの専門家を紹介し、資金計画やお金に関するアドバイスを受けられるよう手配することが考えられます。
こうしたサポートを通じて、選手が経済的な問題を抱えることなく、安心して競技に集中できる環境を整えます。
選手がベストなパフォーマンスを発揮するためには、エージェントの存在が欠かせません。
そのサポートは選手の競技人生にとって非常に重要な役割を果たします。
サッカーの代理人の年収
サッカーエージェントの年収は非常に幅広く、経験や担当する選手の成功によって大きく左右されます。
キャリアを始めたばかりの頃は、年収が30万円から50万円程度にとどまることもありますが、経験を積むことで収入は着実に増加していきます。
成功を収めたエージェントになると、年収が数百万円から数千万円に達するケースも珍しくありません。
収入の主な要因は契約における成功報酬で、これは選手の移籍金や年俸の一部として支払われます。
一般的に、選手の年俸の3~5%がエージェントの手数料として設定されています。
さらに、担当するクライアントの数や、人気選手の代理人契約を獲得できるかどうかも年収に大きく影響します。
特に高額年俸の選手と契約を結んだ場合、エージェントの年収が10億円を超えることもあります。
ただし、サッカーエージェントの仕事は非常に多忙です。
海外選手を担当する場合、時差の関係で深夜に連絡を取る必要があったり、試合映像を徹底的に分析するなど、膨大な時間と労力を求められる場面も多いです。
サッカーエージェントは、努力次第で高収入を得ることができる魅力的な職業である一方で、競争の激しさも特徴です。
そのため、成功を収めるには、長い時間をかけて地道に実績を積み上げる必要があります。
代理人の所属先
サッカーエージェントの働き方(所属先)には、主に2つの選択肢があります。
1つ目は、サッカーエージェント会社に所属する方法です。
この場合、会社の一員として選手とクラブの契約交渉を行ったり、選手のキャリア形成に関するアドバイスを提供したりする業務を担当します。
2つ目は、独立してサッカーエージェントとして活動する方法です。
この働き方では、自身で選手と契約を結び、契約交渉やキャリア支援を直接行います。
独立する場合、自分自身の知識やスキルに加えて、選手やクラブからの信頼を得ることが重要です。
つまり、サッカーエージェントはエージェント会社に所属する道と、独立して活動する道のどちらかを選べます。
どちらの働き方でも、選手やクライアントとの契約内容や状況に応じて柔軟な対応が求められるため、勤務時間は不規則になりがち。
また、結果を出すためには努力を惜しまない姿勢が重要です。
サッカーの代理人になるには?
サッカーエージェントとして活動するには、資格を取得し、各国のサッカー協会に登録することが求められます。
これまで日本国内では、特別な資格がなくてもエージェントとして活動することが可能でした。
しかし、2023年9月末をもって「仲介人制度」が廃止され、同年10月から新たに「FIFAフットボールエージェント制度」が導入されました。
この新制度に伴い、日本国内では「JFAフットボールエージェント規則」が2023年10月1日より施行されています。
FIFAフットボールエージェント制度とは、FIFAが管理するライセンス制度で、このライセンスはFIFAが実施する試験に合格した人だけに与えられるものです。
つまり、このFIFAライセンスを取得していなければ、国内外問わずサッカーエージェントとしての活動を行うことはできません。
新制度の施行により、これまで以上にエージェントの専門性や資格の重要性が求められるようになっています。
サッカーの代理人に必要なスキル
ここでは、サッカーエージェントになるために求められるスキルを解説します。
専門知識
エージェントとして活躍するには、サッカーに関する深い専門知識が必要です。
試合のルールや戦術、選手の特徴、さらには対戦チームに関する情報を理解することはもちろん、選手の強みや課題を正確に評価できる力が求められます。
また、契約交渉や労働条件に関する法律の知識も欠かせません。
こうした知識を持つことで、選手にとって最善のキャリアプランを提案し、クラブとの交渉をスムーズに進めることができます。
交渉力
サッカーエージェントの主な役割は、選手の代理人としてクラブとの契約交渉を行い、最良の条件を引き出すことです。そのため、高い交渉力が必要不可欠です。
交渉力のあるエージェントは、選手に有利な契約条件を獲得しやすく、それが成功報酬の増加にもつながります。
交渉力を高めるには、効果的なコミュニケーションスキルや、相手の意図を的確に把握する洞察力、さらに戦略的な思考が求められます。
また、選手とクラブ双方の要望を調整し、双方が納得できる合意を形成する能力も重要です。
エージェントとして信頼を築くためには、このバランス感覚が非常に大切です。
分析力
サッカーエージェントには、選手の能力を正確に分析し、それを契約交渉やキャリア戦略に活かす力が求められます。
選手のプレースタイルや課題を把握し、改善に向けたサポートを行うのはエージェントの重要な役割の一つです。
また、相手チームや選手のデータを分析し、試合の傾向や展望を見極めることも大切です。
これにより、選手がより良いパフォーマンスを発揮できるだけでなく、クラブとの契約交渉を有利に進めることが可能になります。
コミュニケーション能力
サッカーエージェントとして活躍するためには、高いコミュニケーション能力が欠かせません。
エージェントは、選手やクラブだけでなく、スポンサーやメディアとも頻繁にやり取りを行う必要があります。
選手との信頼関係を築くには、選手の希望をしっかりと理解し、それに基づいて的確なアドバイスを提供する力が求められます。
一方で、クラブとの交渉では、選手の要望をうまく伝えるだけでなく、クラブ側とも妥協点を見つけ出し、双方が納得できる条件を引き出すスキルが必要です。
さらに、スポンサーやメディアとのやり取りにおいては、説得力のあるコミュニケーションが成功の鍵となります。
特に緊張感のある場面でも冷静さを保ち、関係者全員が満足できる解決策を模索することが重要です。
また、国際的な選手やクラブを担当する場合には、英語をはじめとした語学力を磨くことが、コミュニケーション能力をさらに高めるうえで大きな武器となります。
サッカーの代理人のやりがい
選手との信頼関係を築ける
サッカー代理人の仕事の大きな魅力の一つは、選手たちとの信頼関係を築けることです。
選手は自身のキャリアや将来の目標についてエージェントに相談し、重要な決断を託します。
エージェントは選手の目標や希望を深く理解し、最適な契約や条件を提案しながら選手のキャリア形成をサポートします。
信頼関係が築かれると、選手が成功を収めるたびにエージェントもその達成感を共有できます。
選手が輝かしい成果を挙げることで、エージェントも自分の努力が報われたと感じ、共に成長する喜びを味わうことができるのです。
選手との強い絆を築き、彼らの成功に貢献することは、エージェントにとって非常に価値ある経験となり、仕事に対するやりがいを大きく感じられるでしょう。
選手の人生を支える
サッカーエージェントは、選手の陰ながらの支えとなる縁の下の力持ちです。
選手の将来を共に考え、信頼関係を築きながら、目標達成に向けて寄り添っていくのがこの仕事の醍醐味です。
エージェントは選手の成功に向けたさまざまな手助けを行い、彼らが結果を出した瞬間には大きな誇りと達成感を得られます。
選手の成長や活躍は、エージェントにとっても最高の報酬であり、他者の人生に寄り添い貢献することで得られる喜びは、他の仕事では得難いものです。
選手の成功を陰ながら支え、彼らの人生を良い方向へ導くこの仕事は、エージェントにとっても大きな意義を持つでしょう。
さまざまな人と関わる
サッカーエージェントは、選手やクラブ、スポンサー、メディアなど、さまざまな関係者と協力しながら仕事を進めていきます。
この仕事を通じて、異なる国や文化、バックグラウンドを持つ人々と出会う機会が多く、視野を広げる貴重な経験を積むことができます。
また、多様な人々とのコミュニケーションを重ねることで、対人スキルや調整能力を磨くことができ、これがエージェントとしての成長にもつながります。
異なる文化や価値観に触れながら、選手との信頼関係を築き、協力して成功を目指すプロセスは非常に充実感のあるものです。
このような環境で得られる経験は、エージェントにとってかけがえのない財産となるでしょう。
日本で有名なサッカーの代理人
日本国内には、代理人として高い評価を受けている人物がいます。
以下にご紹介する方々は、自身のエージェント会社を設立し、代表として活躍されています。
近年では、日本人選手の海外クラブへの移籍を積極的に支援しており、日本サッカーの発展に大きく貢献しています。
田邊伸明
スポーツイベント会社での経験を経て、FIFA公認の選手代理人ライセンスを取得。
その後、サッカーエージェントとして本格的に活動を開始しました。
田邊氏は、JFA公認のコーチライセンスを取得するなど、サッカービジネス全般にわたる幅広い知識と経験を持っています。
現在は、株式会社ジェブエンターテイメントの代表取締役を務め、数々の有名選手をサポートしています。
主な契約選手には、冨安健洋(アーセナル/イングランド)や浅野拓磨(ボーフム/ドイツ)など、国際的に活躍する選手が名を連ねています。
秋山祐輔
広告代理店でサッカービジネスに携わった後、選手のマネジメントや海外放映権の交渉業務に従事。
その後、FIFA選手エージェント試験に合格し、エージェントとしてのキャリアをスタートさせました。
現在は株式会社SARCLEの代表取締役として、アスリート目線に立ったきめ細やかなマネジメントを行っています。
選手の契約交渉や肖像権管理だけでなく、イベントや広告の企画・運営も手掛けるなど、幅広い業務を担当しています。
主な契約選手には、乾貴士(セレッソ大阪)、植田直通(ニーム/フランス)、大迫勇也(ヴィッセル神戸)、南野拓実(リヴァプール/イングランド)などがいます。
本田弘幸
プロサッカー選手・本田圭佑選手の兄として知られる本田弘幸氏も、サッカーエージェントとして活躍しています。
かつてはサッカー選手として注目されましたが、怪我のためプロ生活を引退。
その後、FIFA公認エージェント資格を取得し、サッカーエージェントとしての道を歩み始めました。
現在はHERO株式会社を設立し、代表として活動中。弟である本田圭佑(スードゥヴァ/リトアニア)をはじめ、中山雄太(ズヴォレ/オランダ)、安倍祐葵(バルセロナB/スペイン)など、多くの選手の代理契約を手掛けています。
海外で有名なサッカーの代理人
海外で有名なサッカーの代理人も以下でご紹介します。
フォルカー・シュトゥルート
ドイツの移籍市場で圧倒的な存在感を誇る『Sports360』の最高責任者。
トニ・クロース、ダヨ・ウパメカノ、ニクラス・ジューレといった世界的なトップ選手を数多く手掛けている。
これまでに手掛けた契約総額は3億700万ポンド(約467億円)に達する。
同業他社と比べて契約選手の数は少ないものの、それでもここまでの地位を確立したのは、まさに彼の卓越した手腕によるものだと言えるだろう。
ミノ・ライオラ
このオランダ系イタリア人は、サッカー業界で最もメディアに露出するエージェントの一人であることは間違いない。
彼が手掛けるクライアントには、ポール・ポグバ、ロメル・ルカク、アーリング・ハーランド、ズラタン・イブラヒモヴィッチといった名だたるスター選手たちが名を連ねている。
その存在は、クライアントの周囲に「嵐」を巻き起こすほど影響力が大きい。
これまでに手掛けた契約総額は6億2100万ポンド(約944億円)にのぼり、エージェントとしてのランキングではサッカー業界で第3位の地位を誇る。
ジョナサン・バーネット
ICMステラスポーツグループの共同創設者であり、業界を代表するエージェントの一人。
彼は、ギャレス・ベイルの代理人として名を馳せ、当時の世界最高額でレアル・マドリーへの移籍を成功させた人物。
現在では、イングランド代表MFジャック・グリーリッシュを最大の顧客として抱えており、今夏には英国人史上最高額となる1億ポンドでのマンチェスター・シティ移籍を取りまとめた。
さらに、ルーク・ショー、ジョーダン・ピックフォード、ベン・チルウェル、パトリック・バンフォードといったイングランド代表選手たちを多数手掛ける一方、エドゥアルド・カマヴィンガ、サウール、キーラン・ティアニーといった国際的な選手の代理人も務めている。
これまでの契約総額は10億3000万ポンド(約1566億円)に達し、世界で最も成功し、富裕なエージェントの一人として知られている。
ジョルジュ・メンデス
『フォーブス』の最新ランキングによれば、このポルトガル人がエージェント界で最大の存在とは言い切れないかもしれない。
しかし、彼の顧客リストに並ぶほどの選手を抱えるエージェントはほとんどいないだろう。
元々はDJとしてキャリアをスタートさせたジョルジュ・メンデスだが、現在は『GestiFute football agency』の最高責任者として、南米やヨーロッパ市場で圧倒的な影響力を持つ。
「世界最高の選手」とも称されるクリスティアーノ・ロナウドを筆頭に、ルベン・ディアス、ベルナルド・シウバ、アンヘル・ディ・マリア、ハメス・ロドリゲス、さらにはジョゼ・モウリーニョ監督といったスターたちをマネジメントしている。
彼が手掛けてきた契約総額は7億3000万ポンド(約1110億円)とも言われ、その実績から「スーパーエージェント」の代名詞ともいえる存在となっている。
まとめ
サッカーエージェントは、選手の代理人として契約交渉や幅広いサポートを行う重要な存在です。
エージェントとして活動するためには、FIFAが定めるライセンスを取得することが必須であり、さらに各国のサッカー協会に登録する必要があります。
また、サッカーに関する知識だけでなく、交渉力や分析力といったスキルも求められます。
国内外で活躍するためには、多方面にわたるスキルと信頼を積み重ねることが重要です。
エージェントとして選手を支えることは、やりがいのある仕事と言えるでしょう。
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